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11月の頭、秋雨が降り、里山がようやく色付き始めた頃。
数年前から練っていた、岩崎での山地(やまち)酪農の計画がついに動きだすと聞いて、岩崎を訪れた。
山地酪農。平原の牧草地ではなく、山間部を拓いて放牧を行う。
はじめ岩崎の山で牛を飼うと聞いたときは想像もつかず驚いたが、話を聞けば岩崎ではかつて山で酪農をしていた事実があるらしい。
もちろん日本で牛乳を飲むために牛を飼い始めたのは戦後からなので、そう遠くない頃の話だった。
山で牛を飼う。口にするのは簡単だけど、それを実現するにあたっての障壁は決して薄いものではない様で、それぞれの道の先人たちに力を貸してもらいながら、計画は動き始めた。
それぞれの道というと、林業だったり、地質や土砂災害への知識だったり、酪農といっても国内では例の少ない山地酪農だったり。
この日は岩手県岩泉市から、なかほら牧場のオーナーご夫婦に来て頂いて、山を拓く作業を先導してもらった。
来春までの大まかな流れとして、令和3年の降雪までに作業道と、牧場を囲う杭の設置を。雪が溶けたら杭に電気柵を装備し、下草を積極的に食べてくれる雄牛を受け入れる。但し昨冬の様に災害レベルの大雪が降ったり、あるいは天候やスケジュールの合間を縫いながら作業に必要な日数を確保することができなければ、遅れてしまうこともあるだろう。自然相手の作業なので、予定の範疇を出ない。
軽トラックに乗って舗装された林道を上っていくと、キャタピラの跡が見えた。50cmほど掘り下げられた地面を見ると、石灰岩のような白い石の欠片が並ぶ。”岩崎”の名の通り、腐葉土の層が薄く、岩盤が近いらしく、重機などを通す際の安定感はあるものの、雨水による土砂流出が誘発されやすいという。
素人の僕は言われてみれば納得だが、山を見ながら、地図を見ながら、リスクを見定めていく。
ちなみに話を聞いていたら、なかほら牧場の中洞さんが最初彼の牧場を整備したときは重機を持ち込むことができず、作業道の整備も手作業だったという。正直想像もつかない。
今回作業していた範囲は杉の植林がされていない部分だったため、雑木林が広がっていた。尾根で風にさらされる木々の葉はすでに身体に緑を仕舞い込んでいて、きれいな黄色が目についた。
丘陵地とは程遠い険しい斜面で、道を付けて、杭を打ち、柵を張り、牛が暮らし始める。
かつて里山に暮らした人にとって山は、畑であり、燃料源であり、遊び場であり、水源であった。
私達の生活の様子は目まぐるしく変わっていくが、かといって山がなくなるわけでは無いし、木は二酸化炭素を吸い、雨は降り、私達の身体は水と栄養で活動を続ける。
便利をすべて捨てて山に戻りたい訳ではなくて、”自然”と呼んで線を引いている世界に、再び少しずつ触れられたら、僕らの心も少しずつ、自然になれるかもしれない。