コマツさん 春の匂い・立ち話

2020年の年の暮れから2021年の1月上旬まで、怒涛のように降り続いた雪。そもそも国の豪雪地帯に指定されている横手・湯沢地域ではあるけれど、どうやら例年の比じゃないようで。
豪雪地帯の市中には、流雪溝と呼ばれる排雪のための設備が整備されている。小安峡から注ぎ岩崎集落の北を流れる皆瀬川の水は、給水ポンプで汲み上げられ、集落を南に向かって流れていく。
でも今年は積雪が始まって早々、流雪溝の水を流さない判断が下されたらしい。


皆瀬川の河原からほど近く、流雪溝の上流域に住むコマツさんご夫婦。自宅の目の前は、行き場を失った雪が積まれている。

手先の器用なお父さんが新しいポストを据え付けている間、耳の聞こえなくなったわんちゃんを抱っこしたお母さんと立ち話をする。
お母さんが言うことにゃ、今年はあんまり雪が多くて、川から引き上げた冷たい水では住民みんなが捨てる雪を溶かしきることができず、下流域で詰まってしまう。
流雪溝に雪が詰まれば、流れ続ける水が道路に上がり、民家の床下に潜り、やがてあちこちが凍結して悲惨な状態になってしまうらしい。

べつに誰かが意図的に嫌がらせをするわけでもなく、息をする隙間もないくらいの大雪の中ではお互い暮らすのに必死、みんな雪を捨てたい。でも流雪溝の許容量はなかなか可視化できないし、詰まってしまえばあまりに被害が大きい。
個人ではなく、同じ流雪溝、同じ水を囲んで暮らす人々にとって必要な判断だったんだろう。


お父さんのポストが出来上がって、去年鹿角で買ってきた甘柿の苗木を寄せる頃、お母さんがセリの大きな束と、いぶりがっこを渡してくれた。


三関のセリ、仙人のあごひげみたいな立派な根っこが美味しい。夕飯の豚すきの上にたくさん散りばめた。