再び、明かりの灯る町へ 八幡神社 宵祭

今年の夏は、とても厳しかった。日照りが続き、雨が降れば大雨に。秋田県南部では大きな被害は無かったものの、秋田市やその北側に位置する市町村では、床上浸水や土砂崩れも見られた。
僕らが暮らしてきた地球は、少しずつ様相が変わってきた。

気温は高いまま推移して、9月上旬にも関わらず稲は黄金色に色づき、例年より1週間以上も早まって稲刈りが始まった。

朝晩に涼しい風が流れ始める頃、毎年9月の第一日曜日、岩崎八幡神社で八幡神社祭典が行われた。

岩崎八幡神社は、岩崎集落の千歳公園内の高台に位置する神社。そのすぐ後ろには水神社も祀られ、側には道祖神である鹿島様が、北側と西側を向くように鎮座している。
八幡様は武運の神として知られているが、祀られている神様や 各地域の神社の成り立ちに依ってご利益が異なるとも言われている。八幡神社は、岩崎集落の鎮守神として支えられてきた。

感染症の流行もあって、数年ぶりの開催となった今回の八幡神社祭典。

”現代”の暮らしが一般化してきた昨今、お祭りや町内行事の存続は難しくなってきた。
「町の活性化のために続けるべき」「伝統を守るべき」、「生活に関係ないので単純に手間に感じる」「行事への出費が憚られる」など、世代によってその行事に対する視点が変わっていくのは、仕方ないことのように思える。
八幡神社祭典も地域のまつりであるから例に漏れず、参加者がじわじわと減り、簡略化が進んでいた。

かつて町内の家々が掲げていた提灯も一度は仕舞い込まれて居たが、今回はお祭りの一週間前から提灯を出して、明かりを灯してもらった。
小神楽も数年ぶりになったが、町内を中心に改めて声掛けを行ったところ、20人近くの子供が集まった。町のお年寄りからは、こんなにも子供が居たのかと驚かれたという。
子供たちの衣装も、使われなくなっていた立派な衣装をクリーニングに出し、足りない分は町内外からの寄付で補った。

取材に訪れたのは23年9月8日の金曜日。祭典は9日, 10日に行われたが、すでに境内や町中には提灯が灯り、小神楽の衣装合わせと練習に集まった子供たちの声が響き渡った。

暮らしが変わり、気候が変わり、自分らの子供たちが大人になる頃、この町は、地域は、環境はどうなっているだろうか。

祈りは、現代において一切の無駄であろうか。

科学の時代においても、人類がすべてをコントロールすることはできない。
宗教や信仰を勧める訳では無しに、もっと素朴な祈りのような時間が、再び僕らの生活に戻ってくるんじゃないかと思う。

地域行事を共感できる価値・体験に再定義していく試みが、地域に脈打つ新しい力になることを願って。