つたこさん 春のお彼岸

3月の15日、道路はすっかり雪がなくなって、少しずつ暖かい日差しの日が増えてきた。
用事が済んで岩崎の街を眺めていると、あちこちからお母さんが集まってくる。

雪の間ずっと待ち望んでいた おでかけ日和の春の日、みんなでお散歩にでも出掛けるのかと思って声を掛けてみると、お彼岸で供えるお花を買うためにお店が来るのを待っているという。

核家族世帯で育った僕はお墓参りの習慣がなくて、お彼岸と言うと 夏の終りの頃をイメージしていた。調べてみるとお彼岸は年に2回あるんだね、秋田ではまだ雪解けの真っ最中。
雀のさえずる中、なんだか気の舞い上がるような陽気で女子会の話がはずむ。僕はなかなか会話に入れなくてぼーっと突っ立っていると、程なくして一台の軽バンが現れた。

お花屋さんが、お花の刺さった鉢植えを並べると、ミツバチのように群がるお母さんたち。大変な冬が終わったよと、お墓に手向ける花を選ぶ。

買い物が終わりかけのお母さんに声を掛けた。つたこさん。どうやら僕の友達のお家のすぐ近くに住んでいるそう。お家までの道のりを一緒に歩きながら世間話をした。

再三雪の話になってしまうが、今年はやっぱり本当に大雪が降った。お墓に行くのも容易でなく、お花を供えに行くのはしばらく先になってしまいそう。
また近所の空き家は雪囲いが壊れてしまい、空き家の屋根から落ちた雪がその家の窓を割った。かといって一年中雪囲いをしていれば換気が悪くなってしまうみたいで、つたこさんの近所のお母さんも困った顔をした。
空き家の話は秋田のみならず、日本中のいわゆる田舎と呼ばれる地域で問題になっていること。これはこの先改めて話をする機会があるといいかもしれない。

道を少し進んだところにある千歳(ちとせ)公園はまだ雪が多くて上がれない。中腹にある大きな運動場は、岩崎に小中学校があった頃には体育祭の会場としても使われていた。春になれば、大雪で傷んだであろう藤棚の整備や草刈りで、地域のお父さんたちが上がるようになる。

秋田のお年寄りは、雪が溶けるのを本当に楽しみにしている。畑仕事もそうだけど、やっぱり主役は山菜。僕は秋田に住んで5年位になるけど実はまだ一度も山菜採りについていったことが無いので、今年こそは挑戦したいと思う。
そう、お酒も飲むようになったし、この頃は苦味が美味しく感じるようになってきたのだ。子供の頃にはわからなかった美味しさだなぁ。