おいしく、料理する スーパーモールラッキー 株式会社マルシメ

湯沢市岩崎には、いわゆるスーパーマーケット的なお店がない。
集落を貫く旧羽州街道沿いには元々、味噌や醤油だけでなくそれぞれの専門小売店が並んでたが、海外ですでに確立されていたセルフサービス式スーパーマーケットを模倣した小売店が1950年代半ばに東京で立ち上がると、その形式は次第に全国に広がった。

”セルフサービス式”と言われるとピンとこないけど、かつては自宅前の座敷に商品を並べて、お店の人が袋詰してくれていたことを表している。

現在岩崎に暮らす人の多くが買い物に出かけるのは、成瀬川を挟んで北隣り、横手市十文字地区。1800年代前半から、羽州街道と増田街道が十文字に交わる交易地として栄え始めた土地。
バイパス沿いに立ち並ぶ全国チェーンのスーパー、ドラッグストア、ホームセンター。今回取材に訪れたのは、そこから少し奥まったところに立つ巨大なスーパーモール ラッキー。

地元の人に愛され、他地域からわざわざ買い物に訪れる人も多いというラッキー。元々は昭和初期に酒類の小売店として開業したマルシメ(◯の中に〆)は現在紆余曲折を経て、十文字町のスーパーモール ラッキー及び、お隣増田町のマルシメ七日町店、秋田市内広島県福山市にグローサリーストア NEED THE PLACE、鎌倉市でアウトドアセレクトショップ YAKAを運営している。
ラッキー店内には、スーパー、産直、セレクトショップ、酒専門店、カフェレストラン、ホームセンター、業務スーパー、おもちゃ、アウトドア用品、釣り用具、洋服、本屋、フードコート等が、結構な密度で詰め込まれている。

4代目の代表取締役を務める遠藤宗一郎氏は横手市出身。東京の大学に進学後、全国チェーンの小売店を統括する本部で勤務していた。3代目のお父様が急に倒れてしまい、25歳の若さで家業を継ぐことになった。
まだ地域スーパーの経営にも慣れていなかった頃、新設されたバイパス沿いにオープンした競合は全国チェーンのスーパー。売上の芳しくない系列店舗。とにかく赤字を減らすため事業規模を縮小しながら、これからどうやって戦っていくかのアイデアを得るために、国内だけでなく海外の小売店の業態を視察しに通った。

地域に根付く小売店として、大量入荷を行うチェーン店の安さにはどうしたって敵わない。
お店でありながら、地域に暮らす人たちの健康や食文化の価値の提起、ここで暮らし食べることをより楽しめるような価値観を根幹に、少しずつ店を変えていった。

アメリカの巨大スーパー的な雰囲気と、ファーマーズマーケット的な柔らかさ。特に重点的に視察に訪れたオレゴン州ポートランドでは、地産の食材やクラフトビールを積極的に取り扱う店舗が多く、またイタリアやフランス等地域の食文化に対する高い関心を反映するスーパーの品揃えなども反映した。
ラッキーの店内を歩けば、地元産の野菜コーナーから外国産の良質な調味料が並ぶコーナー、また進めば国内外のコーヒーや紅茶、ハーブティーなどが目に入ってくる。地域の中の食材と外の食文化を横断的に体感できて、想像力を掻き立てる。

またお年寄りの方の往来を手助けしたいと、巡回送迎バスも運行している。


想像力といえば、ラッキーのアウトドア用品の品揃え。元々先代がアウトドア好きであったところから取り扱いを始めた。
遠藤社長自身もこの土地で育ち、自然豊かな環境は当たり前だと感じていた。”田舎は何も無い”と言う人も多いけれど、この環境を料理、調理する方法や想像力があればもっと楽しめるのではないかと思い、アウトドア用品を拡充している。

きれいにお膳立てして貰う事もとても幸せなことだけど、自分の感性や想像力で料理する楽しさは、日常生活の良いスパイスになるんじゃないかと思う。

24年の春にオープンしたのは、創業当時が酒販店であったところから原点回帰ともなるマルシメ本店。
特に国内の酒蔵との取引は新規での契約となるため、秋田県内の日本酒だけでなく、他県で脚光を浴び始めた酒類や調味料、茶なども取り扱っている。
店内でのテイスティングも可能。



暖簾の前に立つのは柏谷友広さん。店内のワイン以外の酒・食品を担当。
飲食店マネジメントの経験から、地元で採れる山菜などを含む食品の取り扱いにも明るく、お酒に合わせて旬の素材を使った料理をご提案いただくのも良さそう。

大きなセラー内で在庫点検を行っているのは山陰拓也さん。ワインを中心に担当。
全国チェーンの酒販店の勤務からワインに没頭し、ナチュラルワインを基軸に20年近くワイン会などを主催してきた。地域の飲食店との親交も厚く、ワインの購入だけでなく相談に乗ってもらえそう。

またラッキー店内には、ナポリピッツァ職人の認定資格を有するシェフが薪窯で焼いたピッツァが食べられる、Comer+も併設。
こちらはテイクアウトも可能なので、おかずに一品足したいときにもおすすめ。

スーパーモール ラッキー。とにかく盛りだくさんで、便利なだけじゃなく、暮らしや食生活がちょっと楽しくなるような心遣いが感じられる。
それは商いとしてだけでなく、地域の人々と共に文化を育てていきたいという思いの現れなのだと思う。