#商い
ヤマモ味噌醤油さんの横の小路を少し入って行ったところ、もともと酒蔵だった建物の影にある長屋の建物。
事前に電話口でお話したときよりも、すごく気さくな雰囲気でお話を聞かせてくださったのは、岩崎麹屋さんを営むユカさん。
お邪魔した2月の半ば、岩崎麹屋さんはシーズンオフの真っ最中。うなぎの寝床の中腹から奥に位置するこぢんまりとした作業場は、雪に反射した灰色の光に照らされて 寝静まっていた。
岩崎麹屋さんのお味噌は昔ながらの作り方で、春から初夏にかけて毎日 お味噌を仕込み、秋口からは冬の間に食べるためのお漬物を漬けるために使われる、麹の配達を行っている。
お味噌を仕込んでいる時期は基本的に、日が登る頃から午前中いっぱい、毎日450kg前後の仕込み作業を行う。お米と大豆を蒸かした、ほこほことした湯気が建物を満たす。
麹の配達となれば、岩崎や湯沢市内だけでなく、川むかいの十文字や増田、皆瀬川・成瀬川を遡って東成瀬村の方まで配達に出向く。
配達先の中には、昔ながらの方法でお漬物を作るお母さん達もいるらしいくて、今度連れて行ってくれるようにお願いした。
秋田の県南部においてお味噌はそもそも、各家々や親戚の中で仕込まれていたもの。その名残としてそれぞれのお家が、いわゆる麹味噌の原料となるお米と大豆を自分の畑から持ってきて、各家庭がひいきするお味噌屋さんに仕込んでもらう形式がしばらく続いていた。
自分の家の味噌を仕込むことが慣習化している年齢層が次第に高くなってきたり、家族を持ったタイミングで実家を離れて暮らす人が増えてお味噌の消費量が減ることにより、今では自分のお米や大豆を持ってくる人も段々と減ってきたらしい。
しかし昨年お店にお邪魔したときには 長屋の廊下がお米と大豆で山盛りになっていた。かつて近隣に暮らす人々は、どれだけの量のお味噌を仕込んでいたんだろうか。