花よし 暮らしの額縁 2/2

前回の記事から引き続き、岩崎に構える花よしさん。取材に伺ったのは12月の27日。人によっては仕事納めの日だったかと思う。

じつは観葉植物が並ぶ倉庫の前にもう一つ、大きな倉庫に案内してもらっていた。
正月前のなんだか少し引き締まった空気の中、門松を黙々と作っていた。

取材の前半、社屋とそれに隣接する温室を案内していただいてた中で、浩志さんの口から急に門松の話が出た。一瞬理解が追いつかなくてボケっと返事をしたが、日本庭園なども手掛ける会社であることを考えたら急に合点がいった。


門松の制作は、何十年も続けてきたわけでは無かったそう。
浩志さんが若い頃、お父さんが代表だった頃に作っていものの、よその門松を参考に姿かたちを真似たものだった。
神様をお迎えする目印として飾る縁起物を、改めて自分たちのこだわりを込めた形で届けようという想いから、15年ほどまえから現在の形で制作するようになった。
植物を取り扱う花よしさんならではのこだわりで、土台はむしろを強く強く結わえたもの。一般に流通しているものの中にはブリキ缶に装飾をしたものも多いそうだが、一年に一回の縁起物、せっかくだったら全部本物で用意したかったという。


県南の文化なのか、門松の代わりに玄関先にちょこんと松を飾る風習が見られる。
象形的というか、なんだか小さな祈りのようで、その様子がとても好きだ。

花よしさんの販売スペースの入り口で、小さな松の盆栽を見つけて、ふとその風習を思い出した。
興味本位だったけど、ひとつ、買って帰った。

記事を書いているのは1月15日。連れて帰ってきてから20日弱が経過した。ベランダのエアコンの室外機の上に行儀よく座っている。
冬の間でも、雪の塊が落ちて枝を折らない限りは外に置いておいていいと聞いた。
水やりも、根が凍ってしまっては良くないので、積もった雪が溶けた水分と、晴れが続いた日にだけ水をやるようにしている。
盆栽初体験の僕が彼をいつまで元気に生かしていられるか少し不安もあるけど、ゆっくり勉強してみよう。